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登山リーダー夏山研修会

国立登山研修所の主催事業、登山リーダー夏山研修会

大学山岳部や、ワンダーフォーゲル部、山岳地帯での活動をする社会人のリーダー育成を目的とした研修会。

富山県立山で開催されるこの研修会に全国から数十名の研修生を迎えている。

研修参加者は大学生が大半を占め、憧れの北アルプスに胸躍らせる。

 

力量やある程度の指向が似通った班に分かれ登山活動を行うが、我々の班は無雪期の記録がほぼ無いルートを指定し指示した。

初めは耳にしたことのない謎の尾根に困惑した様子だったが、地形図を開きそれはどういった位置関係の場所なのか、標高、植生、地形。

一から調べ、それがプランニングだということを伝えると目から鱗といった様子。

 

昨今はWEBを開けば会ったこともない幾人の記録が手に入るとても便利な時代だ。

それをそのまま行動計画にするコピーアンドペースト計画で形式上の計画書になってしまう。

プランニングにおいて当然のようにやってきた作業も、それが常になったこの時代だからこその反応なのだろう。

 

他人のタイムではなく自分達は1時間当たり何m登れるのか、藪だったらどうか。何時間かかるのか。

引き返しやビバークの目安となる場所、時間。最後の水場はどこか。

そこから自分達にその力量があるのか。

 

 

WEB上のブログやSNSなどの記録には失敗談や課題などは記されていないことが多い。

例えば引き返す判断はどこか。

元にしたブログのあの人のペースから1時間遅れているからこの先も厳しい。それはやめただけ。

これまでの行程と時間、残りの水分食料、疲労度を鑑みてこの先の行程の難易度から続行は困難。これは自ら判断した計画通りの敗退だ。

 

縦と横、ではなく多方面から蜘蛛の巣状に尚且つ絶えず繰り返す思考で課題を迎えることが登山。

そうでないものはインスタント登山、登山体験会をしていることに他ならない。それを否定する気はない。

 

しかし彼らは後輩やチームメイトの命を預かり、生きて帰ることと目的達成に向けて一途でなくてはならない身。

抜かりなく、圧倒的でなくてはならない。嘘でも平静を貫く精神力も必要だ。

そのために物事を根底から考え計画することの重要性を感じとってもらえただろう。

結果的にはこの登山の目的は遂げられず敗退となったが、研修生はやりきった表情をしていたことからこちらの意図も伝わったとして安堵した。

 

技術を学びたいという声が多くを占めるが、ぶつ切りの講習は僕の小銭稼ぎ以外に本来の要はなさない。

絶えず考え経験し強くなった人間にはさらに強い試練が待ち受け、その肉体から必要に駆られて繰り出されるの技術であると考える。飛び級はない。

 

また、どこかの山で逞しく後輩を引き連れた彼らと出逢えたら嬉しく思う。