穂高・槍、冬の旅2
ヒトの気配は一切ないが見慣れた建造物と概念図。勝手な安心感を抱く。
冒険情緒というよりは心の秘密基地感覚だ。
だがそれは季節的な安全が条件であって、それ以外は全くの野放しである。
良い時期のこの場所を見たことがあるというだけでこの安心感はただの”気分”だ。
・2/22(2日目)横尾~屏風岩~稜上2350m
屏風岩の登高ルートは幾多にある。
ただ、今回の登攀対象のうち唯一全装備を担いで登らなければならない。
3日前に湿った降雪があったこと、冬装備で最低限の登攀具で臨むには多めのマージンをとった。
ショベル突破もしたり、屏風岩は僕の想像よりも少し野性的だった。
8:30に取り付き始め、屏風の頭手前のビバーク適地に17:30
初日からなかなかの仕事量だった。
サングラスを飛ばしてしまった。
・2/23(3日目)~前穂北尾根4.5のコル
荷物が重い。
何日か前に降った湿雪が久々の降雪だったようで硬いモナカ、の下は空洞。
踏み抜きがいやになりながら、歩くしかない。
この積雪状況でこれから標高を上げていくと・・・
沢を下りて取り付く前穂東壁に消極的になる僕。
前穂北尾根4・5のコルまでで手を打ってやる。
パートナーは翌朝のためのルート工作。僕は得意の雪堀りで終了。
・2/24(4日目)~3.4のコル”前穂東壁”
朝、パートナーに沢を下りることに乗り気でないことを伝える。
状況のせいなのか、ヘボいのか、巡りに巡って考えた旨。
序盤なのに申し訳ないが、序盤にやらかすと先はない。
前穂、奥穂、涸沢岳を経て北穂へ向かうに切り替えて進んでいくとC沢と同向きの斜面の雪がそこまで多くないことに気づく。
状況がそうなのか、動機バイアスなのか再び巡る。
3・4のコルから登り出そうとしているパートナーに、
「なんか行けそうだね?」
パートナーを揺さぶる遊びではない。
嬉々として懸垂1ピッチ。
そこから取り付きまでトラバース。
それに取り掛かると一変、不穏な雰囲気を感じるパートナー。
「やめとこ!そもそもやめる気だったし。」
そうだよねと笑うパートナーをみて頼もしいなぁと心底思った。
そこから名もなき?なのかわからないが、見出した一見登れそうだけど痺れまくるシブいラインを3ピッチ登ってわが家へ戻った。
紆余曲折、
登ってよかった。登れてよかった。